退職した安知は、今まで給料から天引きされてた健康保険料はどうなるの?
在職中は、給料から天引きされる形で自動的に健康保険料が納付されています。
退職後にどこの就業期間にも属さない期間がある場合は変更手続きが必要で、次の3つの選択肢があります。
- 社会保険から国民健康保険へ加入する
- 前の職場の社会保険を任意継続する
- 家族の扶養に入る
転職が初めてだと手続きに戸惑ってしまいますし、しかも3種類も選択肢があるとなると悩ましいです。
退職してから慌てることがないよう、必要な書類や手続きする場所など、事前に確認しておくことをおすすめします◎
退職後に必要な手続きは全部で4つ
退職後に必要な手続きは次の4つです。
- 税金(所得税・住民税)
- 年金
- 健康保険
- 雇用保険
今回は、退職後に必要な手続きの「健康保険」について解説します。
失業期間がなく退職した翌日に新しい職場へ転職する場合は、社会保険の加入手続きは新しい職場が代行します。
退職後にすぐに転職せず失業期間が発生する場合は、国民健康保険へ加入するか、前の職場の健康保険を任意継続するか、家族の扶養に入る手続きが必要です。
医療保険制度のおさらい
医療保険とは?
- 突然の病気やケガ、出産などに備える公的な医療保険制度
- 日ごろから収入に応じた保険料を支払い、不測の事態に備えて医療給付や手当金を受け取れるようにする
- 日本には「国民皆保険制度」があり、すべての国民が公的医療保険への加入が必要
- 保険料を負担し合うことで個人にかかる医療費を軽減することが目的
公的医療保険は、働き方や年齢により加入する保険が異なるのが特徴です。
健康保険 | 国民健康保険 | |
対象となる人 | 公務員・会社員とその扶養家族 | 個人事業主・農業・漁業 |
医療費 | 原則3割負担 | 原則3割負担 |
出産一時金 | 原則42万円 | 原則42万円 |
出産手当金 | ◯ | × |
傷病手当金 | ◯ | × |
保険者 | 勤務先が所属する健康保険団体 | 居住している市区町村 |
保険料の計算 | (給与額によって変わる) | 会社が計算(前年の所得に応じて計算) | 自治体が計算
保険料の支払い | (半額は勤務先が負担) | 給与から天引き全額自分で支払う |
家族が増えた場合の保険料 | 同じ | 増える |
医療保険の分類は3つ
公的医療保険には、健康保険、国民健康保険(国保)、後期高齢者医療制度があります。
医療保険の種類
- 健康保険 会社員が加入する健康保険組合や協会けんぽ
- 国民健康保険 自営業や退職者、無職の人が加入する地域保険
- 後期高齢者医療制度 職業に関わらず75歳以上の方が加入する
会社に勤めている人やその扶養家族は「健康保険」に、自営業や農家、無職の人やその家族は「国民健康保険」に、75歳以上の方は「後期高齢者医療制度」に加入します。
転職・退職する看護師は医療保険の切りかえ手続きが必要
退職後すぐに再就職しない場合は、なんらかの保険へ加入しなければなりません。未加入の状態で医療機関のお世話になると、医療費は10割全額自己負担となり経済的なダメージは大きいです。
医療費の自己負担額が上限を超えた場合、超過した金額が戻ってくる高額療養費制度もありますが、こちらも公的医療保険制度における給付のひとつのため未加入の方は利用できません。
私は10日ほど入院したことがあるのですが、かかった医療費は3割負担で約15万円ほどです。(手術なし、大部屋、夜間緊急入院)
民間の掛け捨ての医療保険に加入していたので、12万円ぐらい給付金を受け取れました。
私は看護師になる前に入院したんですが、まさか自分が入院することがあるんだとびっくりしました。
高額な医療費に備えるため、万全な体制を整えておきましょう!
離職期間がない場合は手続き不要
失業期間がなく、退職した翌日に新しい職場へ転職する場合は、社会保険の加入手続きは新しい職場が代行します。
転職先は決まっているが離職期間がある場合は手続きが必要
入職日が退職日の翌々日以降になる場合は、保険の切りかえ手続きが必要です。
退職後の公的医療保険の選択肢は3つあります。
- 国民健康保険に加入する
- 前職場で加入していた健康保険の任意継続をする
- 家族の扶養に入る
国民健康保険に加入する
国民健康保険に加入するには、役所で加入手続きが必要です。
手続きする場所
最寄りの役所(住民登録されている市区町村)の該当窓口
必要な持ちもの
印鑑・健康保険資格喪失証明書・身分証明証・マイナンバーカード
役所で書類に記入するだけで手続きは簡単です
健康保険を任意継続する
健康保険任意継続制度とは
退職前に健康保険の被保険者である期間が2ヶ月以上あった場合、退職後も勤務先の健康保険に2年間のみ継続して加入できる制度のことです。
条件 | 資格喪失日の前日までに被保険者の期間が2ヶ月以上ある |
継続できる期間 | 最大2年間 |
福利厚生 | ※傷病手当金・出産手当金の支給には条件がある | 在職中とほぼ変わらない条件で保険給付・保険事業を受けられる
扶養家族 | 引き続き被扶養者にできる |
手続きする場所
各健康保険組合や全国健康保険組合に郵送(窓口でも可)
期限
退職後20日以内(期限を過ぎると二度と加入できない)
必要な持ちもの
任意継続被保険者資格取得申請書、扶養事実を確認できる書類(扶養する家族や親族がいる場合)
以下の状況になると資格を喪失します
- 任意継続被保険者となった日から2年が過ぎる
- 就職して他の健康保険などの被保険者資格を取得したとき
- 保険料を支払い期日までに納付しなかったとき
- 任意継続被保険者でなくなることを希望する場合
「扶養家族がいる」または「高収入」な看護師は任意継続制度がお得な可能性がある
任意継続制度の特徴は、扶養家族の保険料をカバーできることと、保険料に上限が設けられていることです。
1人分の保険料で扶養家族にも健康保険が適用される
任意継続制度は、1人分の保険料でこれまでと同じように扶養家族に健康保険が適用されます。そのため、扶養家族がいる場合は、任意継続制度の方が家計の負担を抑えられる場合もあります。
国民健康保険では扶養という考え方がないため、扶養する家族の人数分だけ保険料がかかります。家族が多いなら任意継続する方が良いでしょう。
任意継続保険制度は保険料に上限額がある
国民健康保険は前年の所得によって保険料が算定されるので、高収入の方や退職金を受け取って所得が高額になると、翌年からの保険料が大幅に跳ね上がります。
一方の任意継続保険制度では上限額が設けられているため、高所得者の場合は国民健康保険に加入するよりも保険料がお得になる可能性があります。
協会けんぽであれば(30万円×保険料率)が上限です。退職した時に月給50万円だったとしても、任意継続保険料は月給30万円をベースに計算されます。
支払う保険料は退職時の給料によって決まります。国民健康保険と任意継続制度のどちらが安くなるか計算して、保険料の負担を抑えられる方を選択しましょう。
①手取り月収が40万円程度ある
②扶養家族がいる
上記の看護師さんは、任意継続保険制度を利用した方が保険料の負担を抑えられる可能性が高いです!
家族の扶養に入る
健康保険では、被保険者だけでなく扶養されている家族にも保険給付を行います。ただ、健康保険の被扶養者になれるのは条件を満たしている親族に限られます。
健康保険の被扶養者になれる条件
- 被保険者の収入によって生活している家族(3等身以内)
- 年収が130万円未満かつ被保険者の収入の1/2未満
手続き方法
被保険者が申請に必要な書類を記入し会社へ提出する
期限
扶養されるようになった日から5日以内
必要な書類
被扶養者異動届、被扶養者状況届、収入の有無を証明する書類
まとめ | 高収入・扶養家族がいて迷った時は任意継続して国保へ切り替えもOK
医療保険の手続きは離職期間がない場合は手続きは不要ですが、しばらく働かない期間がある場合は自分で手続きが必要です。
- 国民健康保険へ加入する
- 前の職場の社会保険を任意継続する
- 家族の扶養に入る
退職したら国民健康保険に加入するのが一般的ですが、看護師のように高収入な場合は、前職場の保険を任意継続した方が保険料の負担を減らせる可能性が高いです。
もしも迷う場合は、とりあえず任意継続を申し込んでおいて、後から国民健康保険へ切り替えるのもひとつの方法です。
とくに扶養家族が多い場合は、家族分の負担額を減らせることができるので、選択肢のひとつとして退職する前に検討しておくことをおすすめします。
看護師は転職回数が多い職種なので、保険料で損しないように備えておきたいですね◎
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